ふぐの一夜干しはふぐの切り身を一晩乾燥させた干物です。
軽く塩をしてから一晩干して水分を抜くことで余分な水分と一緒に魚の生臭さも抜けます。
プリっとした食感と他の生魚にはない旨味、下処理の手間がほとんどかからない手軽さから、ふぐの一夜干しはいまとても人気が広がっています。
また、ふぐはコチラの記事でも書いている通り、低脂肪、低カロリーなのに繊細な旨味があります。
塩だけで味付けをし、旨味を損なわないよう凝縮させた一夜干しは、ふぐの美味しさを味わうのにピッタリの調理法なのです。
ふぐは刺身やちり(鍋)で食べる人が多いと思うのですが、個人的にはふぐの一夜干しが一番好きですね。
ここでは、ふぐの一夜干しがなぜこんなに美味しいのか、掘り下げてみたいと思います。
ふぐの一夜干しの作り方
ふぐの一夜干しは干すことにより、ふぐの素材が持つ旨味を引き出した絶品です。
一夜干しの製造工程は現在では大変を機械で行っていますが、どうしても個体差があるため、脂の乗り具合や水分量、大きさなどに合わせて塩加減を人の手で調整する必要があります。
最終的には長年の経験に基づく見極めが必要で、乾燥時間や塩加減の調整次第で味の良し悪しが大きく変わってきます。
振り塩と立て塩
ふぐの一夜干しを作る際に使われる方法として、振り塩と立て塩の2つがあります。
簡単に違いを言うと、振り開いた魚に直接手で塩をふる方法、立て塩は塩水を作ってその中に魚を一定時間漬ける方法です。
振り塩は、こだわった物を作る際に使われることが多い製法で、手で塩を振りかけるため均一に塩を振るのが大変で、熟練の技術が必要とされています。一匹ずつに手作業で個体の状態に合わせて塩を振っていくため、一度にたくさん作ることが出来ません。
大変手間と時間がかかる製法ですが、熟練の職人によって作られた干物の品質は非常に良く、振り塩だけにこだわっているところもあるそうです。
一方の立て塩は、脂の乗り具合や水分量、大きさなど、ふぐの状態に合わせて濃度を調整し、塩水にふぐを一定時間漬けその後に干す方法です。
同じ濃度の塩水の中に漬けるため味の違いに大きな差が生じにくく、大量生産に向いていることから、一般的には立て塩で作られることが多いです。
塩分濃度の調整や漬ける時間の見極めなどは、長年の経験がなければ難しいと言われています。
干し方
昔は天日干しにされていたそうですが、現在では天日干しはほとんど行われていません。
天日干しにすることによって、太陽の光でアミノ酸(旨味成分)が多く作られ、より旨味が凝縮されるメリットがありますが、身の温度が上がりすぎたり、品質を安定させることが難しい面もあり手間も時間もかかるため、現在では乾燥室の中で干すのが主流となっています。
乾燥室の中で10°C~30°Cの風をあてて乾燥させる低温乾燥によって行われ、これにより湿度による劣化を防ぎ、品質を安定させることが出来ます。
ただし、美味しい一夜干しを作るためには、温度、湿度、乾燥時間などをふぐの状態に合わせてその都度調整をしなければならず、こちらも長年の経験が必要になります。
ふぐの一夜干しがなぜ美味しいのか。美味しさの秘密とは?
どうしてふぐの一夜干しってこんなに美味しいのでしょうか。
別に自分がふぐ好きだからっていうわけではなく、ふぐの一夜干しを食べた人はみな美味しいと言います。
自分の友達には、ふぐ刺しから食べはじめたけど一夜干しを食べたらそっちにハマってしまって、今ではふぐの一夜干しばかり食べている人もいます(笑)
なぜこんなに美味しくて人気なんですかね?
その理由は、ふぐ自体がグルタミン酸、イノシン酸といった旨味成分を多く持っていることに加え、一夜干しにすることで余分な水分が抜け生臭さも一緒に抜け、さらに干すことによってンパク質の分解酵素が働き旨味成分が増加するからだと思います。
ふぐが元々多く持つ旨味成分とたんぱく質の多さが、干物にすると旨味が増す条件に合っているわけですね。
加熱調理をしてもふっくらした食感になるのは、塩に漬けることで身が締り、身の中の必要な水分が失われていないからです。
これがふぐの一夜干しがこれほど美味しい理由なのだと思います。